1990年代の(トレンディ)TVドラマでの障害のある人達の描かれ方・ワタシの見解@
やっとこの間『火星の人類学者/オリヴァー・サックス著/1997年3月早川書房より単行本として刊行』を読み終えた。著書についての説明を、訳者あとがきより抜粋してみる。
オリヴァー・サックス・・・ロンドン生まれの脳神経外科区で、その後アメリカにわたった。映画にもなった『レナードの朝』をはじめ、『妻を帽子とまちがえた男』『手話の世界へ』など数々の著作がある。彼が紹介してきたさまざまな症例は驚異に満ちており、未知の世界を開いてみせてくれた。彼は単なる臨床的事実だけではそれぞれの症例の、そして患者の「真の姿」はとらえられないと考えている。
「症例を生き生きと伝えるには、ある種の小説家的な才能、ドラマティックなセンスが必要だと思う、そうでないと、人物が生きてこない」 からだ。この独特な語り方によって、彼は全世界でおおぜいの読者を獲得し、感動させてきた。 |
彼の著作は確かにドラマティックだった。【脳の機能の変化】自体が、如何にその人達の人生に影響を及ぼすかを医学書よりも面白く描いているからだ。
さて、この著書の中で【長年盲目状態だった男性が、手術で目が見えるようになったが、しかし・・・】という章がある。本来なら【目が見えないというハンデを克服したのだから、ハッピーになったのだろう】という一般的な感想を誰もが持つと思う。だが現実はハッピーどころかシビアだった。
(訳者あとがきより⇒だが彼は、「見える世界」に戸惑い続け、ふたたび視力を失うことで安定を取り戻す。見えない世界で生きてきたひとが、見えるという「異常な世界」に放り込まれたときの悲劇が惻々として伝わってくる。)
「なるほど、体の機能がちょっと変わっている・変わってしまう事自体がドラマチックなのだ。」と考えるに、ふと半年前にレンタルした日本のTVドラマのある場面を思い出す。
それは(盲目の少女が親切なあまりお金を持っていない(かっこよくもない)男性の援助を受けて、手術を受けて目が見えるようになった。・・・目が見えてその男性を見る。・・・さらに、彼よりもっとお金持ちでかっこいい男性も同時に見る。・・・しばらくして、少女は後者のかっこいいお金持ちを生涯の伴侶に選び、前者の男性を捨てる。 |
まるで『残酷な童話』だね。・・・そう大体の1990年代の(トレンディ)TVドラマでの【障害者の描かれ方】は(まるっきりの絵空事)(童話)だと思えば、腹を立てる必要はなかろう。
しかし(童話)ならそれらしくすればいいのに、どういうわけか(実在の症例の言葉を使いたがる)から、誤解を招きやすいのだ。1996年月9『ピュア/和久井映見主演』などもその典型例だろう。リアルタイムの記憶がなかったのでビデオを見直そうと思ったが、生憎近所にはなかった。仕方なくノベライズを図書館で借りて読んでみたのだが、「・・・・なにこれ?」だった。ノベライズでは主人公の(折原 優香)は【軽い知的障害者で特殊才能を持つイディオ・サヴァン症候群】となっていたが、読み進めていくにつれて、「実際の知的障害者がこんな事しゃべるもんかい。」とつっこみがいのある物語だった。・・・で、「イディオ・サヴァン症候群?」
サヴァン症候群だから(その人の天使の羽(??)が見えてそれを芸術作品として造形できる)というらしい。「はっ?」前述のオリヴァーさんの著書によれば、【視覚的、音楽的、言語的な分野のいずれでも、個々の部分を不思議なほどよく覚えているというのは、イディオ・サヴァンの記憶の特徴である。大小にかかわりなく、些細なことも重大なことも無差別で、前景も背景も区別がない。こうした個々の部分から普遍化するとか、因果関係や時間的関係でまとめるとか、自己のなかに取り込むということもほとんどない・・・】と説明している。
(普通には見えない“天使の羽(ちゅーか生えていないだろ、普通?)”が視覚で捉えられるのか折原優香は??お前は霊能者か?スピリチュアルなのか?なら「サヴァン症候群」なんて言葉つかうな。実際にいるサヴァン症候群の方々に失礼だろう。「霊能者の芸術家・折原優香」と訂正したまえ。
当時このドラマ話題になったそうで(主題歌/Mr.Children『名もなき詩』)はヒットし、なんと『折原 優香作品集』もいまだ(2006年)A○zonで扱っているらしい。(うわー、作品集見てみたい!というか本当は誰がその作品を作ったんだ?さすが月9だ!)
『童話』もここまで描かれるとね・・・ワタシの見解A
野島ドラマ『未成年』『聖者の行進』もレンタルして見始めたが、第1話で見たくなくなった。(あ、ありえねえ〜)のオンパレードで【何やっても、話題になればいいんだよ!】の思惑が透けて見えて仕方が無かった。『未成年』の香取慎吾が演じた知的障害者は当時(よく演じている)と言われたそうだが、今放映されている猿役(あ、孫悟空か)より現実味がない!
【何やっても、話題になればいいんだよ!】て多分マスメディアの宿命なのかもしれない。でもねえ、ここまで極端に作られると、偽善的だよ。製作者側の偽善性が鼻につくのに、扱っているのが(純粋・無垢)なんだもん。ブラックジョークか。
『何もそこまで/ナンシー関著/角川文庫』での、ナンシー氏の突っ込みはもっと核心を突いている。『未成年/野島ドラマ(これは後に続く『聖者の行進』に関連するだろう)』と『ピュア』について当時鋭く観ていた人もいたのだ。ちょっと抜粋してみよう。
・・・それは好評のうちに壮絶な終幕を迎えたとされる野島伸司ドラマ『未成年』についてである。野島ドラマって、何も責任取る気がないのである。『未成年』の最終回を見て、それがはっきりとわかった。野島ドラマに欠かせないとされるのが「めくるめく過激」である。・・・略・・・
これらの「過激」には全て保険がかけてあるのだ。あとで誰からも怒られないように。・・・略・・・ 「過激」にかけられた保険は、全てデクが引き受けている。強盗も殺人も明らかに過失であるが、刑事責任を問われなくてもデクは一生施設に入れられることになる、というのが全ての動機となって進んで行くのでだ。何をしても「いいのかよデクが一生施設に入れられても!」のきめゼリフで切り抜ける。このきめゼリフはドラマの中で劇中人物の逡巡を解いて話を進める効果を上げるのと同時に、視聴者にもドラマの整合性をアピールする働きをする。ちゅうか、クギをさしているわけだ。「デクがいるんだ、障害があるんだよ」と。・・・・要するに「純粋で無垢なもの」の象徴なのである。これ出されたら、ヘタな文句何も言えないもの。・・・略・・・ 野島伸司、保険男。過激だ、問題作だって言われてそれに乗っかって食ってるなら、責任取る覚悟くらいしろ。 ※『未成年/1995年秋ドラマ/TBS/脚本野島伸司』 ※『何もそこまで/第4章:テレビああ、無情/野島伸司よ、「過激」を謳うなら保険かけるな』より一部抜粋 |
何かと話題の知的障害者ドラマ。私もとりあえず和久井映見主演の『ピュア』を見ている。「ご都合主義」という言葉ばかりが浮かんできてしょうがない。去年の『未成年」で香取慎吾が演じた知的障害者と同じく(その前に『フォレスト・ガンプ』があるらしいけど)純粋・無垢なものの象徴して描かれ、いろんなものの免罪符とされる構造だ。・・・略・・・
そしてドラマのタイトルが『ピュア』。障害者を描くドラマがタブー視されなくなった事自体はいいと思う。でも、まだいろんな面でリスキーではあろうに、リスクを背負ってまでこのドラマは何を言いたいのか。それとも障害者を扱うことは、もうリスクではないのか。きれいに描きさえすればリスク無しのハイリターンか。いいのかなあ、そんなんで。 ※『ピュア/1996年冬ドラマ/フジ月9/脚本龍居由佳里ほか』 ※『何もそこまで/第4章:同上/和久井映見主演『ピュア』。純粋・無垢は免罪符なのか』より一部抜粋 |
まあ、今現在もインターネットで両作品を調べれば(素晴らしい!)と絶賛している方もいる。野島ドラマはよくDVD化されているしね。(『ひと屋根・・』はどーゆーわけかDVD化していない。)しかし、両作品ともつい約10年ほど前に製作されたものだとは、わかってほしい。つまり、【一般のメディアにおける『障害児者』についての情報と理解度が如何に低かったかという証明】である。
だが!【話題になればいいのさ、(障害者を)純粋・無垢の存在にして描けば(リアリティがなくたって)文句無いだろ】なんて考えて、突っ走ったせいで『聖者の行進』はクレームが続出したのだ、「でたらめもいい加減にしろ!」とね。♪でたらめな〜ひと、でたらめな〜ひと、でたらめ〜なひと、どこにいる?♪(by 爆チュー問題)て感じでね。
そして多分『聖者の行進』」のやり過ぎ内容のせいで、この後は(障害者などを扱うドラマ)は【リアリティ重視】になったのだと思う。医療・病気・障害関係は、必ずと言っていいほど【医事監修】が入るようになっている。入ったらはいったで、『知り合いの自閉症児はあんな動きしない。』とか医事監修にクレームが来るほどらしい。(いいじゃん、“でたらめ感動ストーリー”より)さあ、2000年代のTVドラマの方向はどうなるのか?
まあ、フォローになるかわからないが、和久井映見は、つい数年前NHKドラマ『抱きしめたい』で(自閉症の弟を持つ姉/実在する方の手記を元にしたドラマ)で主役の姉役をやり、確か平成14年文化庁芸術祭・テレビ部門優秀賞を取ったと記憶している。この時のドラマの(自閉症児の弟)役の俳優さん(加瀬 亮)は、実際施設の関係者の協力を得て、演技の研究をされたと関係者から伺った。
『抱きしめたい公式HPはこちら。
余談ながら、ついこの間好評に終わった『一リットルの涙』で(★うさぎってひとりぼっちになるとさみしくて死んじゃうんだよ)⇒は「違うんだよ。」って登場人物が話しているんだわさ。ホントだって!!どちらにしろDVD購入する予定だから、その時又、ここのHPで証明してみせましょう!・・・・うさぎ・・・・。(★うさぎについては、このHPの『ひとつ屋根の下1/野島ドラマだからさその1』を参照してください。)
・・・どちらにしろ、最近のドラマは、古代中国が舞台の『西遊記』みたいな(まるっきりフィクションでも構わないドラマ)でも「こんなの本当の西遊記じゃない!」文句が掲示板にどっさりのっている。視聴者の意識が変わったのか?? 変わったんだろうね、多分。
やっと、まとまった〜。(ハーーー)
(2006年1月29日記録)
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